何かを思いつ

とイナガキ探偵が口を挟み、まんざらでもないと言った表情を浮かべながらこう続けた。
探偵への依頼なんてものはねえ、もともとそう大したことじゃないんですよ。
誰だってほら、ちょっと考えてみりゃあ、ひとつやふたつ???探偵にでも依頼したいことなんてものはあるもんでしてね。
まあ、例えて言うなら???初恋の人に会ってみたい?なんてのとかね」

おお、それ!
それはあるかも、俺も会いたい!」
とマスターはさっきの態度から一変したようにそう反応する。

なるほど。
そう言えばアイツのオンナ絡みなら???ひとつ思い当たる節があるなあ」
と今度はホンジョウが納得したようにひとりそうつぶやく。
アイツ、たぶん俺に言ったこと忘れてると思うんだけど、ボストンに留学してた頃に出逢った、今でも忘れられないオンナがひとりいるって???、俺アイツから聞いたことがあるんだよ」

わかった!
それをホンジョウさんがもう一回ちゃんとナカバヤシさんにプッシュして思い出させ、やっぱり彼女にどうしても再会してみたい、ってそう思わせるってことね?!」
とモトコはクイズの解答に正解でもしたかのように喜んでそう答える。

まあ、とは言ったものの???そのナカバヤシさんって方が実際にそう思ったとしても、次に来るそのアクションに出るまでがねえ???、大抵の場合はかなり難しいんですけど」
と今度はイナガキがそう水を注す。

そうだよなあ。
実際、探偵に依頼なんてなあ。

って、あれ?
でも待てよ」
とクリエイターのホンジョウは何かを思いついたかのように上目遣いに天井を見上げ、しばらく考えこんだ末にこう言った。
そうだ、イナガキさん
なんかチラシとか持ってませんか?その探偵事務所の」

チラシ?
チラシねえ???。
ああ、確か鞄の中に」
とイナガキはごそごそと鞄の中をしばし漁ると、
ああ、ありました、これ」
と言ってカウンターの上にそのチラシとやらを置いた。

それはいたってシンプルなチラシだった。
白バックの中央に、
『イナガキ探偵事務所何でもお気軽にご依頼ください』
と言ったコピーラインが地味な縦書き明朝体で書かれ、そしてそのすぐ下に横書きで連絡先と思われる携帯の電話番号が記されている。

マスター?
あの???何かマジックとかあります?」
と言ったホンジョウに、
マジック?
マジック、マジック???。