ほぼ同時の

ジェシカは真っ赤なトレンチコートの下に10センチ近くのピンヒールを履いていた。
このオンナと日中に会うのは初めてだったが、やはりどう見ても素人には見えない。
本日のセレブ」と書いた看板と供に歩いているような気分だ倫敦銀 /">代。

ジェシカはそれからひと言も口をきかずに早足で歩き続けた。
あのピンヒールでよくこれだけ早く歩けるものだと思えるくらいのスピードで、スニーカーで歩くわたしの息が切れそうなくらいだった。

そして5、6分近くは経っていただろうか?
目の前で彼女はいきなりその歩を止め、道路と反対右側180度の方向に全身を向けたかと思うとそのまま腰から直角に折れ曲がる様に深々と礼をした。
ええ?
とわたしもあっけにとられ、つられるように同様の礼をしたところ、その目の前は神社の鳥居のようだった。
それからわたしたちは、両手と口を備え付けの尺ですくった水で清め、その本殿前にてお賽銭を入れ、縄を引いて鈴を鳴らすと、二礼二拍手で祈りの態勢に入る。
わたしはその時、一瞬酩酊したよう心地よさを感じたがすぐに我に帰り目を開けると代辦加按
こちらへ」
ジェシカがその本殿横に見える上り坂の小道を進むようにと目で合図を送ってきた。
わたしは引き続き従順な態度でその山道のような所々に添え木の段が設置されている坂道を登り始める。
こんなところにいきなり丘のような自然の風景があることを一瞬不思議に感じつつも、一分ほどでその坂を登り詰めると目の前にレストランのテラスのようなスペースが広がっていた。
そしてその右斜め上の方にはさらにそこから石段を登る白い礼拝堂のような建物があった。

こ、ここは?」
と思わずそう尋ねるわたしに、
ここがフィオレンテの丘。
そしてこれがその礼拝堂よ」
ジェシカは言った。

えっ?
こ、ここがフィオレンテ?」
ええ」
そうジェシカがわたしに答えたのとほぼ同時のタイミングで目の前のガラス張りのレストランのようなスペースの扉がゆっくりと開き、そこより見覚えのある満面の笑顔のオトコが現れた。

スナガワ???イワオ?

どうも、ホンジョウさん。
こんな所までわざわざ???」
そう彼は言いながらわたしに握手を求めてきたため、わたしもポカンと口を開けたままその握手に応える。

では参りましょうか?」
と言ってスナガワはその礼拝堂への石段を登り始め、わたしが戸惑ったような目でジェシカを見ると、彼女は顎でその後を着いて行くようにとの合図を送ってきた。
なるほどどうやら今日の主役はジェシカではなくこのスナガワと言うことなのだろう。
そう納得しそのまま彼の後に続いた。

礼拝堂の目の前に来るとスナガワが靴を脱いだので、わたしも自分のを脱ぎスナガワのと並べるようにして置いた。
ジェシカもピンヒールを脱ぐと、その足先にはトレンチコートとお揃いの真っ赤なネールが施されていた五金制品
わたしの視線はその一点に一瞬吸い込まれるようにフリーズしたが、すぐに我に帰るとスナガワが開けた礼拝堂の扉の中へと足を踏み入れた。